美容室に入ると、義母は最後の帯を整えている最中だった。
間に合った。
仕上げの口紅をさしたあと、草履に指を通し、表へ出る。
カメラを向けるが、うまく表情が引き出せない。
そこへ、一緒に美容室に来ていた義母の友人Aさんが、となりに加わった。
いつも何かある時には、ともに行動しているという大の仲良しだ。
一瞬、義母の頬がゆるむ。
義父の体がきかなくなって以来、いつも一人で、牛やサトウキビを相手に、畑で真っ黒に日焼けした義母。
「今日は、チュラ酔いしてこようねー」
Aさんはそういって、義母を連れ去るように、歳祝いの同窓会へ向かった。
義父と並んだ晴れ姿は、撮ってあげられなかったけれど、
同窓会から帰宅する義母に、お茶を入れてあげようね。